小松市立宮本三郎美術館

 小松市立宮本三郎美術館の設計は、小松市が主催する設計提案競技によって、計508案の応募案から選出された。
 宮本三郎氏は、小松市出身の画家であり、昭和の画壇に多大な影響を残された大家で、この美術館では遺族より小松市に寄贈された111点の作品群を中心として企画展示が行われることが決まっていた。宮本画伯は、従軍画家等の経験を経ながら様々な作風に挑戦し、華麗な色彩の中に『時代の持つ大きな力』と『生命の輝き』を描かれた。氏はまた、数多くの著述によっても深い思索の痕跡を残されており、その人間性を美術館の中に表現するという課題は大変難しくもあったが魅力的な課題であった。
 敷地には、明治期に織物産業が隆盛を極めたこの地で、織物の集荷倉庫として明治19年(1886年)に建てられた、木造石貼り倉庫(元北陸倉庫 木造二階建総瓦葺石貼倉庫)が幾多の大火を免れて現存していた。市の歴史博物館として利用されていたが、おそらくは幼少期の宮本少年の記憶にも深く刻まれていたであろうその倉庫を保存再生しながら、小松市の未来への展望と創造を象徴する建物とすることが第二の与件であった。この蔵は長さ約30m、幅約11mの大きなもので、外観はかなり破損していたものの、地元産の凝灰岩の石貼りの上に漆喰となまこ壁が施され、特徴ある黒い小松瓦で葺かれた屋根と共に、都市のランドマークとしての魅力を秘めていた。
 私たちは、時代の力、歴史と伝統を象徴する「元北陸倉庫」は可能な限り原形を再生し、その一方でこの建物の基本構造を参照しながら、現代的な工法による、明るく開放的な増築部を用意して、与えられた課題に答えた。歴史と現代を横断する空間構成の中に、これと共鳴する形で宮本作品が展開され、人々があたかも庭園を巡るように、時代の流れと氏の画風の変遷をめぐりつつ、未来への展望を抱けるような美術館を構想した。敷地はまた、市の中心部を占める芦城公園の辺縁部に位置することから、公園の中の一施設として、敷地全体を小さな都市公園としてもとらえながら計画を行った。
 木造倉庫の保存にあたっては、屋根架構の経年変化によるたわみを防ぎながら耐震補強を行うために、建物の長手方向を貫く構造壁を立て、これより西側のスパンを2層にわたる吹抜空間として、迫力ある木軸架構全体を見上げられる導入部とした。構造壁は木造軸組とは対照的な塗り壁とし、その中に設備的な配管をおさめて展示室では展示壁として、1階収蔵庫では二重空調壁としても機能させ、明治期の倉庫を現代の美術館として成立させる支援要素とした。展示室には木造の架構をあらわしとして、迫力ある歴史的な木組みと、宮本氏の力強い絵画との対話を意図した。
 一方、現代的な増築部分は、倉庫棟の空間構成と呼応するように空間構成を決定している。蔵の木組みのモジュールに従って平面及び断面を計画し、繊細な鉄のフラットバーの柱により、木造的な考え方を参照した910mmモジュールの鉄骨造とした。建物を構成する潜在的な基本構造やリズムを同じくすることにより、歴史的な建物と現代的な建物の空間が、対比的な中にも好ましい呼応関係を形成し、違和感なく調和することができた。中庭側の1スパンは、倉棟の吹き抜けと対話法的に、繊細な列柱の並ぶ回廊として、建物の内外の空間をなめらかに連続させると共に、積雪時の建物へのアプローチを確保している。展示室は、倉庫棟の展示室と対照的に、シンプルな鉄骨の梁のリズムのみを見せた展示室とし、宮本氏の後期の色彩鮮やかな作品群にふさわしい展示室とした。
 実施設計時には、木造の保存、本格的な美術館への転用という課題を現代の建築基準法の中で実現するため関係部局との綿密な検討が繰り返された。また現場においては、木造の架構に予想外の腐朽ヶ所が発見され、蔵の構造が木造と鉄骨造の混構造に変更となるなど、幾多の課題も生じた。蔵の架構や石貼りをすべて手壊しにて解体し、現代の鉄骨架構と一体化した構造を再度組み上げるには、地元施工者、関係者各位の並々ならぬ熱意がなければ実現しなかったであろう。新設部分も美術館としての耐火性能を得るために用いた融点の高いFR鋼を全溶接にて組み上げるには熟練した溶接技術と精度が求められた。
それら関係各位のご尽力もあり、歴史と現代に橋を架ける美術館が完成した。

■石川県「第七回いしかわ景観大賞」受賞
■石川県「第22回石川建築賞(石川県知事賞)」受賞
■ 小松市「こまつまちなみ景観賞」受賞
■ 日本建築学会北陸支部「2001年度北陸建築文化賞」受賞
■ 「第43回 建築業協会賞(BCS賞)」受賞
(掲載雑誌 日経アーキテクチャー2001 1-8

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■建築概要: 
主要用途   美術館
敷地条件   第二種住居地域、近隣商業地域 準防火地域
敷地面積   1,235.78 m2
建築面積   713.82 m2
延べ床面積 1,262.95 m2
構造・規模 鉄骨造、木造  地上2階 塔屋1階
建物高さ   最高高さ : 10.65 m

■設計・監理: 
 建築:株式会社 ティー.エイチ.ティー.アーキテクツ
    角倉剛、八尾廣、大野高志 
 構造(株)TIS&PARTNERS 今川憲英、大岡保子 
 設備(株)環境エンジニアリング 後藤智久、沢田勝治
 積算(株)高輪建築事務所
■総工費:48,265万円 

  ■施工:
   建築 トーケン・道場建設特定
      建設工事共同企業体
   設備 中谷電気工事株式会社
         小島工業株式会社
         かるみ設備
  ■設計期間:1999年3月〜1999年7月
   施工期間:1999年9月〜2000年8月


MIYAMOTO SABURO MUSEUM
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