家族書庫の家
この家は、ご夫婦とお嬢様お二人の全員が本がお好きというご家族のための家です。加えて奥様のお父様が文筆家でいらっしゃり、将来的にその膨大な蔵書をお引き受けになるための書庫が必要との条件もありました。
ご家族はまた、南西側に広がる自然公園を、とても愛していらっしゃいました。1年以上の土地探しの末にこの新しい造成地を手に入れたご家族の「想い」を、私たちは率直に形にしたいと思いました。「個室は最小限でよい」とおっしゃる仲の良いご家族は、共有する時間をとても大切にしているように感じられました。
私たちはやがて、個室の機能の一部(ワークスペース、書斎)を外に出し、ご家族の共有する時間と空間を最大限豊かにする方向へと計画を進めました。そんな私たちの計画は、結果として大きな「家族書庫」という吹き抜け空間と、森に向かって突き出すデッキをもつ、2階のおおらかな家族スペースへと収斂していきました。「家族書庫」の吹き抜けには垂直な光が、2階家族スペースには水平方向の光が室内に流れ込み、気持ちの良い室内外のつながりを生み出しています。長さ13m、高さ5mにわたるとても大きな書架は一部収納や飾り棚としても用いられることを想定し寸法を決められていますが、建物全体を覆う屋根の小屋梁のリズムとも呼応して、家族の生活を育む母体としての役割を果たしています。
1階では、黒々とした土間空間が、また2階では森へと伸びるデッキが、家族書庫<家族の文化>と外部空間<家族にとっての自然>とを結び、ご家族の共有する時間を外<環境>に向かって開くことになりました。土間空間は、家の中の<外>でもあり、これに面する和室は来客を迎え入れると共に、ご家族を外へと誘う「離れ」のようなスペースでもあります。
家の各所には、「黄土」、「本紫」、「柳色」、「文人茶」、「鴇色」、「藍白」など、古来より日本人に愛されてきた色が配されています。1階では「土」と「草」を、2階では「食」と「茶」と「緑、空」をテーマとする色が、さりげなくご家族の生活に彩りを添えつつ、空間にめりはりをもたらすこととなりました。
将来までご家族共有の時間を暖め続ける家であってほしいと、設計者は願っています。
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